2004年05月26日
黒木舜平は太宰治
黒木舜平(太宰治)
shunpei kuroki
太宰治に黒木舜平というペンネームで
書いた作品があったとは知らなかった。
「断崖の錯覚」の書き出しを紹介
http://www.aozora.gr.jp/index_pages
/person974.html
(青空文庫)
「その頃の私は、大作家になりたくて、大作家になる
ためには、たとえどのようなつらい修業でも、またど
のような大きい犠牲でも、それを忍びおおせなくては
ならぬと決心していた。大作家になるには、筆の修業
よりも、人間としての修業をまずして置かなくてはかな
うまい、と私は考えた。恋愛はもとより、ひとの細君を
盗むことや、一夜で百円もの遊びをすることや、牢屋へ
はいることや、それから株を買って千円もうけたり、
一万円損したりすることや、人を殺すことや、すべて
どんな経験でもひととおりはして置かねばいい作家に
なれぬものと信じていた。けれども生れつき臆病では
にかみやの私は、そのような経験をなにひとつ持たな
かった。しようと決心はしていても、私にはとても出来ぬ
のだった。十銭のコーヒーを飲みつつ、喫茶店の少女を
ちらちら盗み見するのにさえ、私は決死の努力を払った。」
ためには、たとえどのようなつらい修業でも、またど
のような大きい犠牲でも、それを忍びおおせなくては
ならぬと決心していた。大作家になるには、筆の修業
よりも、人間としての修業をまずして置かなくてはかな
うまい、と私は考えた。恋愛はもとより、ひとの細君を
盗むことや、一夜で百円もの遊びをすることや、牢屋へ
はいることや、それから株を買って千円もうけたり、
一万円損したりすることや、人を殺すことや、すべて
どんな経験でもひととおりはして置かねばいい作家に
なれぬものと信じていた。けれども生れつき臆病では
にかみやの私は、そのような経験をなにひとつ持たな
かった。しようと決心はしていても、私にはとても出来ぬ
のだった。十銭のコーヒーを飲みつつ、喫茶店の少女を
ちらちら盗み見するのにさえ、私は決死の努力を払った。」