2004年08月29日

小説家のための指南書

辻 邦生1925-1999
kunio tsuji

「言葉の箱-小説を書くということ」

この本は文章読本ではない。

豊かな感性や直感力が不足しているという
コンプレックスを持ち、趣味が哲学だとい
う辻邦生の、小説家になるための指南書である。

言葉の箱―小説を書くということ

<自分の好みを見つける>
「基本的には、非常に強い自分のなかの好み、
核心といってもいい、自分のなかの生命のシ
ンボルをまず発見する。
だれが何と言おうと、ともかく東京が好きだ
とか、隅田川が好きだということだってかま
わないと思います。」

<特別なことは何もない>
「作品を書くために何か特別なことをする必
要はまったくない。むしろ一日一日の歩みの
なか、刻々の時間の移りのなかで、自分が本
当に生きていることをつかんでいるかという
ことのほうが大事だと思います。」

「ものを書くうえで大事なことは、知識では
まったくない。あなた方がものを書くのに必
要なものはすべてもうあなた方のなかにある
んです。」

<スケッチ&ドラマを考える>
「電車に乗ったら、ぼんやり吊り広告なんか
見ずに、前に座っている人間を見てほしいと
思います。その人間のドラマを常に見る。す
ごく特徴的な人だったら、その人のことを必
ずメモしておく。(そして、それ以上に大切
なのは)その人が幸福になろうとするどうい
う意志を持っていて、それを邪魔しているの
は、あの人の弱気なのかしら、学校を出られ
なかったというコンプレックスかしら、やた
らに背が高すぎるせいかしら、というような
ことをメモすることが大事なのです。」

<はがき一枚のダイジェスト>
「あなた方が文学修行をしなければならない
というときに、たくさんのことを書かなけれ
ばいけない、原稿用紙で最低二十枚は書かな
ければならないというふうに考えないで、は
がき一枚におもしろい話を書いて妹に送った
り、遠くにいるお母さんを喜ばせてあげる。
そんな話はなかなかパッと出てきませんから、
ギリシャ神話でもいいし、日本の神話でもい
いし、おとぎ話でもいいから、それをあなた
方の流儀で、うんとダイジェスト、アレンジ
して、単純化して、はがき一枚に書く。
毎日、毎日、三百六十五枚たまったら、物語
とはどういうことかが、体のなかでわかって
きます。」

<時間があるかぎり書く>
「「・・・である」だな、いや「・・だ」だ
なとか、いろいろ気になる。
そういうことがまったく気にならなくなるま
で、言葉を自分の体のなかに消化してしまう
ことが大事です。
そのためには・・・それはもう書くしかない。」

panse280
posted at 16:33

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