鏡
「吾輩は猫である」(68)
夏目漱石 natume souseki 1867-1916
2009.9 15 110刷発行(新潮文庫)
(日本語の表現を探して)
<鏡>
「元来鏡と云う者は気味の悪いものである。深夜ロウソク
を立てて、広い部屋のなかで一人鏡を覗き込むには余程の
勇気がいるそうだ。吾輩などは始めて当家の令嬢から鏡を
顔の前へ押しつけられた時に、はっと仰天して屋敷のまわ
りを三度駆け回った位である。如何に白昼とはいえども、
主人の様にかく一生懸命に見詰めている以上は自分で自分
の顔が怖くなるに相違ない。」