あばたの体面
「吾輩は猫である」(67)
夏目漱石 natume souseki 1867-1916
2009.9 15 110刷発行(新潮文庫)
(日本語の表現を探して)
<あばたの体面>
「吾輩は主人の顔を見るたびに考える。まあ何の
因果でこんな妙な顔をして臆面なく二十世紀の空
気を呼吸しているのだろう。昔なら少しは幅も利
いたか知らんが、あらうるあばたが二の腕へ立ち
退きを命ぜられた昨今、依然として鼻の頭や頬の
上へ陣取って頑として動かないのは自慢にならん
のみか、却ってあばたの体面に関する訳だ。」