2019年10月20日

苦沙弥先生の喧嘩

「吾輩は猫である」(60)

夏目漱石  natume souseki 1867-1916

2009.9 15 110刷発行(新潮文庫)

(日本語の表現を探して)

<苦沙弥先生の喧嘩>
「大きな声を出すものがある。見ると紛れもなき
苦沙弥先生である。主人の声の図抜けて大いなる
のと、その濁って聞き苦しいのは今日に始まった
事ではないが場所が場所だけに吾輩は少なからず
驚ろいた。これは正しく熱湯の中に長時間のあい
だ我慢をして浸かっておった為め逆上したに相違
ないと咄嗟の際に吾輩は鑑定をつけた。
それも単に病気の所為なら咎むる事もないが、
彼は逆上しながらも充分本心を有しているに
相違ない事は、何の為にこの法外の胴間声を出し
たかを話せばすぐわかる。彼は取るにも足らぬ
生意気書生を相手に大人気もない喧嘩を始めたの
である。」

panse280
posted at 04:59

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