2017年05月02日

春風夏雨

「春風夏雨」(1)
岡潔  1901-1978
kiyoshi oka

2014.5.25 改版初版発行(角川文庫)

<無明>
「ピカソの展覧会を見た。これほど無明を
うまく描いているのを初めて見た。

無明とは生きようとする盲目的意志である。
ピカソの絵を見て、無明がどんなに恐ろしい
ものかがよくわかった。

彼の礼賛者たちはこれらの絵が美だと思って
いるらしいが、それは美ではなく、美を粧った
無明というものなのである。

しかしピカソ自身には、これが無明だとは
わかっていないに違いない、ひょっとすると
美だと思って描いているのかもしれない。

だいたい西洋の人間は、ものを作ることは出来て
も、本当に見ることはできない。しかし私たち東洋人
には、これだけの絵は描けなくても、これが
どんなものかはよくわかっており、したがって
その使い道もわかるのだ。

ピカソの絵の使い方は、まず修身の教科書に2枚
ぐらいは入れたい。昔の百鬼夜行図だってピカソ
ほどうまく描けていない。

ピカソは醜悪なものを絶えず見つめることによって、
その本質を描けるようになったといってよい。

ピカソの絵には芥川龍之介のいう「悠久なものの影」
は見当たらない。「悠久なもの」なしにやっている
ところに巨匠たるゆえんがある。」


panse280
posted at 06:41

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