白隠禅師
「情緒と日本人」(5)
岡潔 1901-1978
kiyoshi oka
2015.4.21 第1刷発行(PHP研究所)
<白隠禅師>
白隠禅師が田舎の寺の住持をしていた時、
豆腐屋の娘が子を産んで、その男は逃げた。
娘は父親に叱られるのが怖くて、男は「白隠」
だと父に告げた。
父親は寺に怒鳴り込んで、その児を禅師におし
つけた。
禅師は一言の弁解もせず、その児を育てた。
自分で乳をもらい歩いて、雪の深い日は幼い児
を懐に入れて、にこにこしながら歩いている。
娘はたまりかねて父に白状した。
このことが近隣に聞こえて、教化はおのずから
進んだと聞いている。
(対話:人間の建設)