自然は有難い
「草枕」(24)
夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume
2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--
<自然は有難い>
「余は草を茵(しとね)に太平の尻をそろりと
卸した。・・・
自然の有難い所はここにある。いざとなると容赦
も未練もない代りには、人に因って取り扱いを
かえる様な軽薄な態度はすこしも見せない。
岩崎や三井を眼中に置かぬものは、いくらでも居る。
冷然として古今帝王の権威を風馬牛し得るものは
自然のみであろう。
自然の徳は高く塵芥を超越して、絶対の平等観を
無辺際に樹立している。」