2015年07月28日

小説の読み方(2)

「草枕」(22)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<小説の読み方(2)>
「(小説を)初めから読んじゃ、どうして悪るい
でしょう」

「初めから読まなきゃならないとすると、仕舞まで
読まなきゃならない訳になりましょう」

「妙な理屈だ事。仕舞まで読んだっていいじゃあり
ませんか」

「無論わるくは、ありませんよ。筋を読む気なら、
わたしだって、そうします」

「筋を読まなきゃ何を読むんです。筋の外に何か
読むものがありますか」

余は、矢張り女だなと思った。多少試験してやる
気になる。

「あなたは小説が好きですか」

「私が?」と句を切った女は、あとから「そうですねえ」
と判然しない返事をした。
あまり好きでもなさそうだ。

「好きだか、嫌だか自分にも解らないんじゃないですか」

「小説なんか読んだって、読まなくったって・・・」と
眼中にはまるで小説の存在を認めていない。

「それじゃ、初めから読んだって、仕舞から読んだって、
いい加減な所をいい加減に読んだって、いい訳じゃ
ありませんか。」

panse280
posted at 22:23

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字