2015年07月26日

女体美の表現(温泉に女と二人)

「草枕」(20)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<女体美の表現(温泉に女と二人)>

「(その女の)輪廓を見よ。頸筋を軽く内輪に、
双方から責めて、苦もなく肩の方へなだれ落ちた
線が、豊かに、丸く折れて、流るる末は五本の
指と分れるのであろう。

ふっくらと浮く二つの乳の下には、しばし引く
波が、又滑らかに盛り返して下腹の張りを安ら
かに見せる。

張る勢を後ろへ抜いて、勢の尽くるあたりから、
分れた肉が平衡を保つ為めに少しく前に傾く。

逆に受くる膝頭のこのたびは、立て直して、長き
うねりの踵につく頃、平たき足が、凡ての葛藤を、
二枚の蹠(あしのうら)に安々と始末する。

世の中にこれ程錯雑した配合はない、これ程統一
のある配合もない。

これ程自然で、これ程柔らかで、これ程抵抗の
少い、これ程苦にならぬ輪廓は決して見出せぬ。」

「余はこの輪廓の眼に落ちた時、桂の都を逃れた
月界の嫦娥(じょうが)が、彩虹の追手に取り囲ま
れて、しばらく躊躇する姿と眺めた。」

注)嫦娥は月世界に住む仙人の名。

panse280
posted at 11:37

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