2015年07月24日

ミレーのオフェリア(水底の往生図)

「草枕」(18)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<ミレーのオフェリア(水底の往生図)>

「余は湯槽のふちに仰向けの頭を支えて、透き徹る
湯のなかの軽き身体を、出来るだけ抵抗力なきあた
りへ漂わして見た。
ふわり、ふわりと魂がくらげの様に浮いている。
世の中もこんな気になれば楽なものだ。

分別の錠前を開けて、執着の栓張(しんばり)を
はずす。どうともせよと、湯泉のなかで、湯泉と
同化してしまう。流れるもの程生きるに苦は入らぬ。
・・・
成程この調子で考えると、土左衛門は風流である。
・・・
ミレーのオフェリアは成功かも知れないが、彼の
精神は余と同じ所に存するか疑わしい。
・・・
一つ風流な土左衛門をかいて見たい。
然し思う様な顔はそう容易く心に浮んで来そうも
ない。」

panse280
posted at 18:49

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字