2015年07月23日

工夫したが物にならん

「草枕」(17)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<工夫したが物にならん>

「今わが画にして見ようと思う心持ちは(雪舟や
蕪村より)もう少し複雑である。
複雑であるだけにどうも一枚のなかへは感じが
収まりかねる。
・・・
色、形、調子が出来て、自分の心が、ああ此所に
居たなと、忽ち自己を認識する様にかかなければ
ならない。

生き別れをした吾子を尋ね当てる為め、六十余州
を回国して、寝ても覚めても、忘れる間がなかった
ある日、十字街頭に不図邂逅して、稲妻の遮ぎる
ひまもなきうちに、あっ、此所に居た、と思う様
にかかなければならない。

それがむずかしい。この調子さえ出れば、人が見て
何と云っても構わない。画でないと罵られても
恨みはない。」

panse280
posted at 16:12

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