2015年07月21日
私は春と共に動いている
「草枕」(15)
夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume
2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--
<私は春と共に動いている>
「一物に化するのみが詩人の感興とは云わぬ。
・・・
余は明らかに何事をも考えておらぬ。又は慥か
に何物をも見ておらぬ。わが意識の舞台に著る
しき色彩を以て動くものがないから、われは
如何なる事物に同化したとも云えぬ。
されど吾は動いている。
・・・
花に動くにもあらず、鳥に動くにもあらず、
人間に対して動くにもあらず、只恍惚と動いて
いる。
強いて説明せよと云わるるならば、余が心は
只春と共に動いていると云いたい。」
夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume
2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--
<私は春と共に動いている>
「一物に化するのみが詩人の感興とは云わぬ。
・・・
余は明らかに何事をも考えておらぬ。又は慥か
に何物をも見ておらぬ。わが意識の舞台に著る
しき色彩を以て動くものがないから、われは
如何なる事物に同化したとも云えぬ。
されど吾は動いている。
・・・
花に動くにもあらず、鳥に動くにもあらず、
人間に対して動くにもあらず、只恍惚と動いて
いる。
強いて説明せよと云わるるならば、余が心は
只春と共に動いていると云いたい。」