2015年07月15日

複雑な女の表情

「草枕」(9)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<複雑な女の表情>

「軽侮の裏に、何となく人に縋(すが)りたい景色
が見える。人を馬鹿にした様子の底に慎み深い分別
がほのめいている。才に任せ、気を負えば百人の
男子を物の数とも思わぬ勢の下から温和しい情けが
吾知らず湧いて出る。

どうしても表情に一致がない。悟りと迷が一軒の家
に喧嘩をしながら同居している体だ。

この女の顔に統一の感じのないのは、心に統一の
ない証拠で、心に統一がないのは、この女の世界に
統一がなかったのだろう。

不幸に圧しつけられながら、その不幸に打ち勝とう
としている顔だ。不仕合(ふしあわせ)な女に違ない。」

panse280
posted at 17:41

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