2015年07月14日
動か静か
「草枕」(8)
夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume
2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--
<動か静か>
「美術家の評によると、ギリシャの彫刻の理想は、
端粛(たんしゅく)の二字に帰するそうである。
端粛とは人間の活力の動かんとして、未だ動かざる
姿と思う。
世上幾多の尊厳と威儀とはこの湛然たる可能力の
裏面に伏在している。動けばあらわれる。あらわる
れば一か二か三か必ず始末がつく。
この故に動と名のつくものは必ず卑しい。
運慶の仁王も、北斎の漫画も全くこの動の一字で
失敗している。
動か静か。これがわれ等画工の運命を支配する
大問題である。」
夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume
2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--
<動か静か>
「美術家の評によると、ギリシャの彫刻の理想は、
端粛(たんしゅく)の二字に帰するそうである。
端粛とは人間の活力の動かんとして、未だ動かざる
姿と思う。
世上幾多の尊厳と威儀とはこの湛然たる可能力の
裏面に伏在している。動けばあらわれる。あらわる
れば一か二か三か必ず始末がつく。
この故に動と名のつくものは必ず卑しい。
運慶の仁王も、北斎の漫画も全くこの動の一字で
失敗している。
動か静か。これがわれ等画工の運命を支配する
大問題である。」