2015年07月13日
「恍惚」とは?
「草枕」(7)
夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume
2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--
<「恍惚」とは?>
以下、「恍惚」を表現したものだが、
単純に味わってほしい。
「自然の色を夢の手前までぼかして、有のままの宇宙
を一段、霞の国へ押し流す。睡魔の妖腕をかりて、
ありとある実相の角度を滑かにすると共に、かく和ら
げたる乾坤に、われからと微かに鈍き脈を通わせる。
地を這う烟りの飛ばんとして飛び得ざる如く、わが魂
の、わが殻を離れんとして離るるに忍びざる態である。
抜け出でんとして逡巡い、逡巡いては抜け出でんとし、
果ては魂と云う個体を、もぎどうに保ちかねて、
氤氳(いんうん)たる瞑氛(めいふん)が散るとも
なしに四肢五体に纏綿して、依々たり恋々たる心持ち
である。」
注)氤氳(いんうん):天地の気がおだやかにたちこめるさま。
瞑氛(めいふん):よく見えない天地の気。
夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume
2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--
<「恍惚」とは?>
以下、「恍惚」を表現したものだが、
単純に味わってほしい。
「自然の色を夢の手前までぼかして、有のままの宇宙
を一段、霞の国へ押し流す。睡魔の妖腕をかりて、
ありとある実相の角度を滑かにすると共に、かく和ら
げたる乾坤に、われからと微かに鈍き脈を通わせる。
地を這う烟りの飛ばんとして飛び得ざる如く、わが魂
の、わが殻を離れんとして離るるに忍びざる態である。
抜け出でんとして逡巡い、逡巡いては抜け出でんとし、
果ては魂と云う個体を、もぎどうに保ちかねて、
氤氳(いんうん)たる瞑氛(めいふん)が散るとも
なしに四肢五体に纏綿して、依々たり恋々たる心持ち
である。」
注)氤氳(いんうん):天地の気がおだやかにたちこめるさま。
瞑氛(めいふん):よく見えない天地の気。