2015年07月12日

十七字にしてみよう

「草枕」(6)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<十七字にしてみよう>

「詩人とは自分の屍骸を、自分で解剖して、その
病状を天下に発表する義務を有している。その方便
は色々あるが一番手近なのは何でも蚊でも手当り次第
十七字にまとめて見るのが一番いい。

十七字は詩形として尤も軽便であるから、顔を洗う
時にも、厠に上った時にも、電車に乗った時にも、
容易に出来る。

十七字が容易に出来ると云う意味は安直に詩人になれ
ると云う意味であって、詩人になると云うのは一種の
悟りであるから軽便だといって侮蔑する必要はない。

軽便であればある程功徳になるから反って尊重すべき
ものと思う。まあ一寸腹が立つと仮定する。腹が立った
所をすぐ十七字にする。十七字にするときは自分の腹立
ちが既に他人に変じている。
・・・
一寸涙をこぼす。この涙を十七字にする。するや否や
うれしくなる。涙を十七字に纏めた時には、苦しみの
涙は自分から遊離して、おれは泣く事の出来る男だと
云う嬉しさだけの自分になる。

これが平生からの余の主張である。」

panse280
posted at 18:58

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