2015年07月08日

自然を見ると元気になる

「草枕」(2)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2006.5.20 第131刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<自然を見ると元気になる>

「山の中へ来て自然の景物に接すれば、見るものも
聞くものも面白い。面白いだけで別段の苦しみも
起らぬ。
・・・
然し苦しみのないのは何故だろう。只この景色を
一幅の画として観、一巻の詩として読むからである。
画であり詩である以上は地面を貰って、開拓する気
にもならねば、鉄道をかけて一儲けする了見も起らぬ。

只この景色が、--腹の足しにもならぬ、月給の補いに
もならぬこの景色が景色としてのみ、余が心を楽ませ
つつあるから苦労も心配も伴わぬのだろう。

自然の力はここに於て尊とい。吾人の性情を瞬刻に陶冶
して醇乎として醇なる詩境に入らしむるのは自然である。」


【参考】
「苦悩している人も、自由に自然を眺めるならば、
たちまち元気づき、快活となり、はげまされる。
それは意欲から解放されて、意志をもたない純粋な
認識作用に没頭したからである。」
(ショウペンハウエル)


panse280
posted at 20:25

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字