2015年06月11日

主人の就寝前の癖

「吾輩は猫である」(24)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2009.9.15 第10刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<主人の就寝前の癖>
「主人の癖として寢る時は必ず横文字の小本を
書斎から携えて来る。然し横になってこの本を
二頁と続けて読んだ事はない。ある時は持って
きて枕元へ置いたなり、まるで手を触れぬ事さ
えある。一行も読まぬ位ならわざわざ提げてく
る必要もなさそうなものだが、そこが主人の主
人たるところでいくら細君が笑っても、止せと
云っても、決して承知しない。
毎夜読まない本を御苦労千万にも寝室まで運ん
でくる。ある時は欲張って三四冊も抱えて来る。
・・・
思うにこれは主人の病気で贅沢な人が竜文堂に
鳴る松風の音を聞かないと寝つかれない如く、
主人も書物を枕元に置かないと眠れないのであ
ろう、してみると主人にとって書物は・・・
活版の睡眠剤である。」

注)竜文堂は京都の鋳工。松風の音は、茶人たち
が湯のたぎる音をいう表現。

実際の漱石も上記のようなものだっただろう。
日々の一歩一歩で漱石は千里の道を歩いたの
である。

panse280
posted at 19:56

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