2015年06月01日

鼻子と名づける

「吾輩は猫である」(14)

夏目漱石 1867-1916
sohseki natsume

2009.9.15 第10刷発行(新潮文庫)
--漱石の文章を味わってみる--

<鼻子と名づける>
主人のうちに女客が来た。

「年は四十の上を少し超した位だろう。抜け上った
生え際から前髪が堤防工事の様に高く聳えて、少なく
とも顔の長さの二分の一だけ天に向ってせり出して
いる。・・・鼻だけが無暗に大きい。人の鼻を盗んで
来て顔の真中へ据え付けた様に見える。
三坪程の小庭へ、招魂社(靖国神社)の石灯籠を
移した時の如く、独りで幅を利かしているが、何と
なく落ち付かない。
・・・
吾輩はこの偉大なる鼻に敬意を表する為め、以来は
この女を称して鼻子鼻子と呼ぶ積りである。
・・・
鼻子は・・「どうも結構な御住居ですこと」・・
主人は「嘘をつけ」と腹の中で言ったまま、ぷかぷか
煙草をふかす。」

panse280
posted at 11:13

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