2015年04月25日

歓迎される天才は稀なり

「漱石全集第18巻」(41)
--文学論--

夏目漱石 1867-1916
souseki natsume

1979.8.8 第7刷発行(岩波書店)

<歓迎される天才は稀なり>
俊才奇傑往々にして中道に挫折して凡庸の群に
入る。凡庸の群に入るとき天下は泰平なればなり。

凡庸は処世の方針として尤も安全なればなり。
古諺に君子危に近よらずと云へるは是が為なり。

天才の意識する所は能才のそれよりも世俗を去る
事一層遠きが故に之を貫かんが為めには水準以上
の猛烈なる闘争を敢えてせざる可からず。

この点より観察したる天才は人間として尤も不幸
なるものなり、憐むべきものなり。

自ら進んで天才となり、もしくは之を羨んでその
位置を得んと欲して謳歌するは誤まれるの甚しき
ものなり。

panse280
posted at 17:43

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