2015年04月10日

写実主義

「漱石全集第18巻」(27)
--文学論--

夏目漱石 1867-1916
souseki natsume

1979.8.8 第7刷発行(岩波書店)

<写実主義>
写実主義なるものも厳正なる意義において
は全然無意味なるを知るべし。
吾人の心に浮かぶ意識をそのまま有体に紙上に
写すことはさほど困難ならざる様に思われるが、
試みに静坐して吾が脳裏に出現し来る所のもの
を追求する時はその意外に煩雑なるに驚くべし。

言語能力はこの無限の意識連鎖のうちを此所彼
所と意識的に、或いは無意識的に辿り歩きて
吾人思想の伝動器となるにあり。

すなわち吾人の心の曲線の絶えざる流波をこれに
相当する記号にて書き改むるにあらずして、この
長き波の一部分を断片的に縫い拾うものと云う
が適当なるべし。

panse280
posted at 07:26

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字