2015年04月01日

裸体画鑑賞の不思議

「漱石全集第18巻」(18)
--文学論--

夏目漱石 1867-1916
souseki natsume

1979.8.8 第7刷発行(岩波書店)

<裸体画鑑賞の不思議>
「裸体画を美術なりと一言に道破し去ればそれまで
なれど、裸体画は如何なる性質のものぞと考へたる時、
吾人はその特徴の著しきに驚ろかずんばあらず。
・・・
試みに思へ如何に裸体画の美を信ずる人々といえども
わが女児を赤裸にして舞踏会に伴うことあるべきか、
またわが細君の如何に美はしければとてこれが衣服を
剥ぎ去ってこれを公衆に誇らむとするものあるべきか。
・・・
何れの画館何れの展覧会を問わず当然に風紀を乱すべき
この種の裸体画は累々として陳列せらるるを見るは
奇異の現象にあらずして何ぞ。
ことにいわゆる上流の紳士淑女なるものは、ただに
恬然と場中に出入りするのみならず盛んにこれを品評
して毫もはばかる気色なし。これ明白なる矛盾なり。」

「余が用語を適用すれば裸体画の鑑賞もまた一種の
道徳分子除去に外ならない。
・・・
習慣の結果とはいえ誠に不思議な現象なり。」

panse280
posted at 07:18

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