2015年03月06日

菊も百合もわが心に適う

「漱石全集第25巻」(4)
--日記及び断片(中)--

夏目漱石 1867-1916
souseki natsume

1979.12.5 第3刷発行(岩波書店)

<断片明治42年1月頃より6,7月頃まで>

・人情は一刻にして生の内容を急に豊富なら
 しむ。此の一刻を味って死する者は真の
 長寿なり。

・自己が不真面目なるだけ、それだけ自己は
 他より欺かるるの権利を他に與えたるものなり。

<日記明治43年6月6日〜7月31日まで>

・6月9日、胃腸病院行。便に血の反応あり。
 胃潰瘍の疑あり。帰りに日比谷で高貴の人の
 馬車を拝す。皇后陛下なりといふ。然し誰人
 か分からず。ただ脱帽して敬意を表す。

 好天気。座敷の花活に夏菊を挿す。
 書欄の上の銅瓶には百合を活ける。
 色黒を帯びたる赤。菊も百合もわが心に適う。

panse280
posted at 19:05

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