2015年02月21日

良寛の書

「父・夏目漱石」(16)
夏目伸六 1908-1975
shinroku matsume

1992.6.25 第3刷発行(文春文庫)

<良寛の書>
父がこれほどの執心を示した相手は、後にも先にも
良寛をおいて他にはない。

大正3年1月、漱石は越後の山崎亮平に手紙を出す。
内容は、自分に買えるほどの値段ならば買いたい
から探してくれ、というものだ。
(漱石の死は大正5年の12月9日)

大正3年の暮にも、高田市の森成麟造に、
「良寛はしきりに欲しいのです とても手に入り
ませんか。」と手紙を出している。

大正4年11月にも、森成氏へ、
「良寛などは手に入らないものとあきらめては
いますが時々欲しくなるます。縁があったら忘れ
ないで探してください。」と書いている。
結局、森成氏の尽力で、やっと良寛の書を手にする。

漱石の喜びはひと通りではなく、お金の他に自分の
書を希望ならばいくらでも書くと伝えている。
「其他の拙筆御所望とあれば何なりと・・良寛を
得る喜びに比ぶれば悪筆で恥をさらす位はいくら
でも辛抱可仕候。」

父の生涯においてこれほどの喜びを見せたことは
なかったように思う。
晩年の父の書体が良寛に似てくるほど傾倒していた。
父は書よりも絵の方を好んでいたが、良寛ほどに
父の心をとらえた画家は見つからなかった。

panse280
posted at 17:17

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