2015年02月13日
文鳥
「父・夏目漱石」(8)
夏目伸六 1908-1975
shinroku matsume
1992.6.25 第3刷発行(文春文庫)
<文鳥>
父の「文鳥」が新聞に発表されたのは、私が
生まれる半年前の明治41年の6月である。
文鳥は鈴木三重吉にすすめられて飼ったもの
で、別に小鳥が好きだった訳では無論ない。
結局この文鳥は所用で2日ばかり家を留守のし
て帰宅してみると、死んでいた。
餌と水が尽きていたのである。
一番上の姉の話では、その時鳥かごの前に立ち
止まってしばらく死んだ文鳥を眺めていた父の
眼に、涙らしい光るものが溜まって、それが
一筋すうっとアバタだらけの頬の上を伝って
流れたという。
夏目伸六 1908-1975
shinroku matsume
1992.6.25 第3刷発行(文春文庫)
<文鳥>
父の「文鳥」が新聞に発表されたのは、私が
生まれる半年前の明治41年の6月である。
文鳥は鈴木三重吉にすすめられて飼ったもの
で、別に小鳥が好きだった訳では無論ない。
結局この文鳥は所用で2日ばかり家を留守のし
て帰宅してみると、死んでいた。
餌と水が尽きていたのである。
一番上の姉の話では、その時鳥かごの前に立ち
止まってしばらく死んだ文鳥を眺めていた父の
眼に、涙らしい光るものが溜まって、それが
一筋すうっとアバタだらけの頬の上を伝って
流れたという。