紅葉と一葉
「漱石の思い出」(6)
夏目鏡子述 1877-1963
kyoko natsume
2009.10.25 第7刷発行(文春文庫)
<紅葉と一葉>
熊本から上京した頃、紙面には紅葉の「金色夜叉」
が連載されていました。その人気はたいしたもの
でしたが、夏目はいっこうに感心しなかったよう
です。
感心していたのは一葉女史の作物でした。
一葉女史の全集を買って参りまして、官舎の二階
にねころびまして、「たけくらべ」などには
ことに感嘆して、男でもなかなかこれだけ書ける
ものはないと申して、しきりに全集を読んでいた
そうです。これは私(鏡子)の弟から聞いた話です。