2014年12月23日

芭蕉の俳句はきわめて卑怯なり

「俳人蕪村」(2)

正岡子規  1867-1902 
shiki masaoka

1967.6.5 初版発行(中央公論社)

<芭蕉の俳句はきわめて卑怯なり>
芭蕉、ひとたび古池の句に自家の立脚地を定めし
後、徹頭徹尾記実の一法によりて俳句を作れリ。
芭蕉、ただ自己を詠むのみ、その見識のきこと
実に笑うに堪えたり。

芭蕉は理屈に考えて理想は美にあらずと断定せし
や必せり。
芭蕉の門人多しが、芭蕉のごとく記実的なるは
一人もなし。芭蕉の俳句はきわめて卑怯なりしなり。

蕪村の理想美の句は、

<河童の恋する宿や夏の月>
<名月や兎のわたる諏訪の湖>(

5複雑美
古池の句はついに俳句の本尊として崇拝せらるる
に至れり。この句、俳句中の最も簡単なるものに属す。

芭蕉はこれをもってみずから得たりとし、終身複雑な
る句を作らず。
芭蕉は俳句は簡単ならざるべからずと断定してみずか
ら美の区域を狭く区切りたる者なり。

ここに蕪村立てり。蕪村、複雑美をもって俳句に新風
を起こせり。和歌の簡単をしりぞけ、唐詩の複雑を借
り来たれリ。


panse280
posted at 19:27

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字