2013年08月09日

吉田茂1878-1967 89歳

「人間臨終図巻(3)」(183)

山田風太郎 1922-2001
fuutaro yamada

2001.05.15 初版(徳間文庫)

<吉田茂1878-1967 89歳>
5次にわたる吉田内閣において、彼ほど新聞から
極端な毀誉褒貶を受けた総理大臣はいない。

わがままな、戦後ただ一人の「貴族」は、その
楽天性とユーモアで大衆の敬愛を受け続けた。

吉田引退後、政界は彼の愛弟子、池田勇人、佐藤
栄作によって引き継がれた。

晩年、大磯の別邸で暮らしていたころ、天皇が、
「吉田は顔色がよくて結構だね」といったのに
対して「吉田は人を喰っていきておりますので」
と答え、天皇を破顔させた。

実際彼は、ビフテキや鰻をベーコンで巻いてバター
で焼いたような脂っこいものが好きで、「私は
4000年生きるよ」と言って客をケムリに巻いていた。

吉田は主治医の健康診断を受け、異常なし、と医師
が言い、医師が門を出るときに静かに息を引き取った。
死の前日「富士が見たい」といって障子をあけさせ、
晴天にそびえ立つ美しい夕暮れの富士山をあかず
眺めいっていた。

panse280
posted at 19:54

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