2013年04月21日

辻潤1884-1944 60歳

「人間臨終図巻(2)」(75)

山田風太郎 1922-2001
fuutaro yamada

2001.03.15 初版(徳間文庫)

<辻潤1884-1944 60歳>
妻、伊藤野枝を大杉栄に奪われた辻は、その
無為浮遊、虚無、エゴイズム、破倫、酒乱、
性格破産者、いいたい放題、迷惑のかけ放題の
行状にもかかわらず、熱烈な信仰者を生んだ。

萩原朔太郎は彼に手紙を送った。
「大兄に対しては特別の尊敬と友愛を感じて
おります。日本の現存する文学者で、僕の敬意を
表する人物は、漸く四、五人にしかすぎませんが、
大兄もその一人で、日本における稀なる存在として、
特別の敬愛を持つものです。」

辻は間歇的に錯乱状態をくりかえしつつ、尺八を
吹いて全国を放浪した。戦時下の乞食の生活は
惨憺たるものであったろう。

11月24日、B29の東京爆撃のあった日の夜11時ごろ、
知人が上落合のアパートを訪ねたら、辻はシラミ
だらけの蒲団の中で死んでいた。餓死であった。

かって友人であり「鮫人」という作品で辻潤を
モデルに使った谷崎潤一郎は、戦後「辻潤碑」を
建てるため寄付を頼まれて「生きているときも
大迷惑をかけられた。死んでからまでも知るもの
か」と、はねつけた。

panse280
posted at 18:17

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