2012年12月24日

人間臨終図鑑

「死言状」(16)
山田風太郎 1922-2001
fuutaro yamada

2005.12.1 初版第一刷発行(小学館文庫)

<人間臨終図鑑>
「・・「人間臨終図鑑」来月号分を書いて、散歩にでる。
・・・
とりあげる人物は、べつに変わった死に方をした人を
選んだわけではなく、いろいろな分野で、なるべく多く
の人が名を知っていそうな人物を選んだのだが、いまま
でのところ、やはり変わった死に方をした人間が多い。
後世、人に記憶されるためには、ただの死に方をしない
ことも一つの条件らしい。
次に、その多くは挫折の死である。・・・ところが、
客観的に見ると、それで彼の人生はそれなりの完結した
すがたを示すのである。むしろ挫折の死ほど「完全」の
相を見せるのである。
・・・
一般に、人間は長生きし過ぎる。長生きし過ぎて、せっかく
の「完全」形をみずから壊している。」

「西郷は城山で死んだから西郷なのである。あらゆる欲望
を充足し、名誉と富を満喫し、死後の計らいをすべて終えて
大往生などという人の死に方は、その人の全人生は、ひとの
同情も共鳴も買わないという点で、芸術的に失敗作だ、
という気がするんですがね。」

panse280
posted at 18:38

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