2012年12月08日

漱石の「明暗」

「半身棺桶」(9)
--1991.10徳間書店--
山田風太郎 1922-2001
fuutaro yamada

1998.02.15 初版発行(徳間文庫)

<漱石の「明暗」1990/4月>
「漱石の「明暗」は、私にとってふしぎな一冊
である。・・この小説は何度か読んだのだが、
そのたびにきれいさっぱり忘れてしまうのである。
私は、長い間には漱石の作品のほとんどを平均
3回くらい読んでいる。・・・そのストーリーや
各場面までだいたい記憶しているのに、この「明暗」
にかぎって・・・読んで1,2年たつと白紙状態に
なってしまうのがふしぎである。
・・・
では、「明暗」が影うすい作品かというと、読む
たびにその精妙さに感嘆する。芥川龍之介が、・・
この作品を読んで、「うますぎる」と嘆声を発した
そうだがもっともである。特に私が舌をまくのは、
作中人物の、なかでも女性の会話のみごとさだ。
・・・
日本の女言葉は、これほど自在であったか、と
感嘆する。
・・・
あと2,3ヶ月もあれば、「明暗」は、漱石のみなら
ず日本の小説の最高作品として完結したのでは
ないか。
・・・
世の中に「未完」で、・・・ほんとうに「惜しい」
と思われるものはそう多くはないが、この未完の
「明暗」だけは、その稀有な一例である。

panse280
posted at 19:01

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