2012年12月07日

眠りにつく魔法の書

「半身棺桶」(8)
--1991.10徳間書店--
山田風太郎 1922-2001
fuutaro yamada

1998.02.15 初版発行(徳間文庫)

<睡眠>
「少なくともこの20数年間、いちども病気らしい
病気をしたことがない。その一応の健康のもとは
何であるか、ときかれると、いつも「まあ、
よく寝るからでしょうな」というくらいよく寝る
男である。」

<眠りにつく魔法の書>
「それは漱石のある種の文章である。・・・
漱石のいちばん静かな低温の文章だ。
たとえば、「思い出す事など」の一節。
「空が空の底に沈み切った様に澄んだ。
高い日が蒼い所を目の届くかぎり照らした。・・・・」

たとえば、「硝子戸の中」の一節。
「まだ鶯が庭で時々鳴く。春風が折々思い出した
ように九花蘭の葉を動かしに来る。・・・・・・・」
・・・
これらの文章は、ふしぎに人の心を落ちつかせる。
こんな現象を起す作家の文章を、ほかに私は知らない。
・・・
漱石は実に自由に、のびのびと書いているから
だろう。
とにかく、何度読んだか知れない漱石のこれらの
文章を、呪文のようにくり返しているうちに、
私は眠りにはいることができるのである。」

panse280
posted at 19:49

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