2012年12月06日

人間とはいかなる状態でも幸福を感じ得るものだ

「半身棺桶」(7)
--1991.10徳間書店--
山田風太郎 1922-2001
fuutaro yamada

1998.02.15 初版発行(徳間文庫)

<人間とはいかなる状態でも幸福を感じ得るものだ>
「知人が、足の動脈血せんを起こして、その足を
切ることを余儀なくされた。・・本人の衝撃はいか
があらんと、心配しいしい病院へゆくと、本人は
意外にサバサバした顔をしている。もっとも、その
心境に至るまでの心のかっとうは察するに余りある
が、・・
また別の知人が、眼をわずらって、医者からその眼
を摘出するよりほかはない、といわれたといって
蒼くなっていた。数日後、いや摘出の必要はない、
焼くだけでいいそうだ、と天にものぼる顔で話した。
・・・
人間とはいかなる状態でも幸福を感じ得るものだ、
と感じいった。
・・・
敗戦直後、一物もない焦土の中で、ただその夜から
電灯をつけられるというその一事だけで、何物にも
まさる幸福感にひたったことを思い出した。」

panse280
posted at 19:45

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