2012年12月03日

糞の心配

「半身棺桶」(4)
--1991.10徳間書店--
山田風太郎 1922-2001
fuutaro yamada

1998.02.15 初版発行(徳間文庫)

<糞の心配>
「死にゆく人間を意外に悩ませるのが糞の心配である。
・・・自分の最後のプライドにかかわることだからだ。
徳川夢声は、・・オムツをあてがわれ、嫁にペニスを
拭いてもらいながら、「恐れ入りますなあ」と、情け
なさそうにいった。
モラエスは、世話する女が大小便の始末に1回いくらと
請求したために、最後は糞尿にまみれて自殺した。
佐藤紅緑は、死床に尿瓶をさしこまれると、「無礼者!」
と叫び、コーモリのようによろめきながら便所へゆこう
とした。
山本周五郎も死の前日、妻の手をふりはらって便所に
ゆき、中で昏倒した。
伊藤整も、病院で、死の2日前まで眼をむいて宙を
にらみながら、ひとりでトイレにいった。
萩原朔太郎も、シーツに排泄物の布をしいて、そこへ
するように母や娘がいくらいっても、最後のお願いだ
と哀願して、枯木のような身体を便所へ抱えられて
いった。
明治天皇もまた、最後まで床上排便をきらい、侍従に
「臣従の道を忘れるがごとく」叱咤されるほど抵抗した。
・・・
現代、人は多く禁煙したり節塩したり、ジョギングした
りエアロビクスしたりして、けんめいに長生きに努めて
いるらしいが、あまりに長生きすればこういう日を
迎えなければならない。」

panse280
posted at 17:31

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