2012年06月17日
女性の教養
「生きる意味を問う」(14)
--私の人生論--
三島由紀夫 1925-1970
yukio mishima
1997.9.18 初版発行(学陽書房・人物文庫)
(1984年単行本として大和出版より刊行されたもの)
<女性の教養>
「教養が、美しく生きてゆくのに役立つと考えている
一群の女性がいます。・・・女性のための教養と呼ばれ
ているものには、みんな偽善の匂いがあり、・・・
彼女たちには、黒い教養というものが存在することが、
永久にわからないのです。
女性たちは、世間の認可ずみの、古くさい、危険のない
教養が大好きだ。古典音楽の知識、十九世紀までの小説
(かっては黒い教養に属していたが・・)、なまぬるい
恋愛映画、・・・こういうのもが、今日、女性の教養と
呼ばれているものの一覧表ですが、これを総動員して、
美しく生きようとしている女性たちの群を見ると、私は
心底からおぞ気を慄(ふる)わずにはいられない。
こういう傾向は、文化をなまぬるく平均化し、言論の
自由を婦人側から抑制し、一国の文化全体を毒にも薬に
もならないものにしてしまう恐るべき原動力であります。
アメリカという国のあの文化全体における婦人の害毒を
つらつら考えると、私は恐ろしくなる。」
「あらゆる女性が美しく生き、あるいは美しく生きよう
としていることは、絶望的なことである。・・・
おそらくそれは、女性が男性よりも確実に存在している
ということの別のあらわれに他ならなおのであろう。
醜さというものは、存在の裂け目だからである。
・・・芸術は・・存在の裂け目からしか生まれて来ない。
女性が芸術家として不適任なのはこの点であります。
・・・自ら美しく生きようと思った芸術家は一人も
いなかったので、美を創ることと、自分が美しく生きる
こととは、まるで反対の事柄である。」
--私の人生論--
三島由紀夫 1925-1970
yukio mishima
1997.9.18 初版発行(学陽書房・人物文庫)
(1984年単行本として大和出版より刊行されたもの)
<女性の教養>
「教養が、美しく生きてゆくのに役立つと考えている
一群の女性がいます。・・・女性のための教養と呼ばれ
ているものには、みんな偽善の匂いがあり、・・・
彼女たちには、黒い教養というものが存在することが、
永久にわからないのです。
女性たちは、世間の認可ずみの、古くさい、危険のない
教養が大好きだ。古典音楽の知識、十九世紀までの小説
(かっては黒い教養に属していたが・・)、なまぬるい
恋愛映画、・・・こういうのもが、今日、女性の教養と
呼ばれているものの一覧表ですが、これを総動員して、
美しく生きようとしている女性たちの群を見ると、私は
心底からおぞ気を慄(ふる)わずにはいられない。
こういう傾向は、文化をなまぬるく平均化し、言論の
自由を婦人側から抑制し、一国の文化全体を毒にも薬に
もならないものにしてしまう恐るべき原動力であります。
アメリカという国のあの文化全体における婦人の害毒を
つらつら考えると、私は恐ろしくなる。」
「あらゆる女性が美しく生き、あるいは美しく生きよう
としていることは、絶望的なことである。・・・
おそらくそれは、女性が男性よりも確実に存在している
ということの別のあらわれに他ならなおのであろう。
醜さというものは、存在の裂け目だからである。
・・・芸術は・・存在の裂け目からしか生まれて来ない。
女性が芸術家として不適任なのはこの点であります。
・・・自ら美しく生きようと思った芸術家は一人も
いなかったので、美を創ることと、自分が美しく生きる
こととは、まるで反対の事柄である。」