2012年06月08日

私のきらいな人

「生きる意味を問う」(5)
--私の人生論--
三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
1997.9.18 初版発行(学陽書房・人物文庫)
(1984年単行本として大和出版より刊行されたもの)

<私のきらいな人>
「谷崎潤一郎は商人で、永井荷風は侍であった。
・・・それが証拠に、荷風は一切借金をせず、人との
約束は潔癖に守ったが、潤一郎は、・・・借金も財産
のうちと考えていた。」

「私(三島)は酒席で乱れる人間ほどきらいなものは
ない。・・・私がきらいなのは、節度を知らぬ人間で
ある。ちょっと気をゆるすと、膝にのぼってくる、
・・・そして愛されていると信じ切っている犬のよう
な人間である。女にはよくこんなのがいるが、男でも
めずらしくはない。荷風がこんな人間をいかに嫌った
かは、日記の中に歴然と出ている。」

「友達こそ、相手の尻尾もしっかりつかんでいなければ
危険である。・・・私(三島)が好きなのは、私の尻尾
を握ったとたんに、より以上の節度と礼譲を保ちうるよ
うな人である。そういう人は、人生のいかなることにか
けても聡明な人だと思う。親しくなればなるほど、遠慮
と思いやりは濃くなってゆく、そういう附合を私はした
いと思う。・・・世の中にいつも裸な真実ばかり求めて
生きていると称している人間は、概して鈍感な人間であ
る。」

「多分たしかなことは、人をきらうことが多ければ多い
だけ、人からもきらわれていると考えてよい、というこ
とである。」

panse280
posted at 21:00

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