2012年05月12日

男の悟り

「反貞女大学」(25)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
1994.12.05 第1刷発行(ちくま文庫)

--第一の性--
<男の悟り>
「いずれにしろ、男はどこかで悟るのです。「俺は
この世の果てを見てしまったな」と感じる瞬間に
いつかはぶつかるのです。それが二十五歳でくるか、
・・・七十五歳でくるかは、その人の環境、経歴、
いろんな条件によってちがって来るが、こうした
悟りは必ず色事をとおして起こる。・・・
色即是空とはよく云ったものである。
・・・
男で、何かのときにこの悟りをひらかなかった人は、
まだ一人前の男とはいえない。
・・・
西鶴の「好色一代男」の主人公世之介は、あらゆる
道楽の果てに、七人の友と共に、好色(よしいろ)丸
という舟に乗って、死にいたるまで快楽にふけるため、
女護の島へわたるのですが、これはあらゆる男の夢で
あり理想であって、「永久に悟りをひらかぬ男」と
いう典型が描かれている。それだけに作者の西鶴自身
は、すでに悟りをひらいた男であろう、ということが
察せられるのです。
さて悟りをひらいた男はどこへ行くか?
そこからはじめて、男の現実が、男の仕事の世界が
本当にひらけてくる。男が自分の現実を発見するの
です。」

panse280
posted at 19:03

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