2012年05月10日

男は買物ぎらい

「反貞女大学」(23)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
1994.12.05 第1刷発行(ちくま文庫)

--第一の性--
<男は買物ぎらい>
「男は何故一般に買物を好かないか。
・・・
第一に、男の目的直行主義のためである。
・・・だから風のように店へ飛び込んできて、・・・
飛んで出るような買物をする。・・・
第二に、男は実利主義が薄いためである。
・・・A店B店C店D店とまわって値段を比べ、結局又A店
が一番安くていいものが買えるとわかってA店へ戻る、
といった「利口な買物」のできる男は、ほとんどありま
せん。・・・第三に、男には時間がないのです。・・・
尤も・・酒を呑んだり、拳闘のテレビを見たりする暇は
十分あるはずだから、男が内心、買物などを人生におい
て費やす価値のある時間と考えていないためである。
第四に、男にはヘンな虚栄心が強いためである。
あいつはキレイな使い方をする、などという評判をばか
に重んじ、金のない男ほど、バカな金を使う。・・・
第五に、男には買物の最大の要素である、スリル、競争心
、嫉妬心、闘争意欲などを持つ余裕がないためである。
男はこれらのものをみんな仕事の場でふんだんに消費して
いるので、買物なんかに発揮する分が余っていない。
・・・「Bさんが電気冷蔵庫を買ったから俺も」という気
も起こらず、・・・ましてやデパートの特売場で、組ん
づほぐれつ、死してのちやむの精神で、ラグビーそこのけ
の熱戦を展開する気力も残っていないのです。」

panse280
posted at 19:12

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