2012年04月25日

第七講 食物学

「反貞女大学」(8)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
1994.12.05 第1刷発行(ちくま文庫)

<第七講 食物学>
「世の中には、若い男性への愛情を、「食わせる」
ことで表現する母性型女性も数多い。
・・・
「あいつんちのマザーは、豪勢に食わせてくれるぜ」
(といううわさが立つと食い盛りの男の子がおしかけ
てくる)
・・・
女主人は暇をもてあまして、しかもその暇を活用する
術(すべ)を知らないというタイプが多い。
・・・
それが時たま、若いピチピチした連中の旺盛な食欲を
充たしてやったお礼に、「おふくろさん、ゴッツアン」
・・・
「オッ、さら洗いぐらいつき合いますよ」
・・・
といわせるなど、まことに、聖母的性的満足を味わって
いる例が少なくない。しかしこれには、薄氷をわたるが
如きスリルがあって、もしほんのちょっとでも、
「お前のおふくろさん色っぽすぎるぜ」などと、むすこ
が友だちにいわれでもしたら、すべての美しい幻影は
破壊され、架空の母性愛は崩壊し、彼女自身の夢は
くだかれ、彼女も自分自身をきらいになってしまうで
しょうから、あくまで「やぼで世話好きで、すばらしい
あかあさん」という節度を保つことが大切である。」

panse280
posted at 18:22

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