2012年04月24日

第六講 芸術学(2)

「反貞女大学」(7)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
1994.12.05 第1刷発行(ちくま文庫)

<第六講 芸術学>(2)
「芸術家に対する女性の態度には二種類あり、
一つは「母性愛型」で、このほうは比較的害が
ありません。
・・・
もう一つは「あこがれ型」で、ファン心理にすぎ
ないものが、芸術家にあこがれるは、一段高級な
心理だと思い込んでいるから始末がわるい。
こういう女性は、野球選手やテレビ・スタアには
決してあこがれない。なぜなら、そんなものの
魅力は誰にもわかるからで、芸術となると教養が
なければわからない。
・・・
この場合、ことごとに引き合いに出されるのは、
かわいそうな亭主です。
・・・
芸術家が女の心をとらえるのは彼自身が女性的
だからかもしれないのです。
・・・
子供をできるだけ夫に似ない人間に仕立てようとして、
子供を芸術家にしようと夢みはじめる時でしょう。
いわゆる「芸術ママ」の狂熱は、果たされざる反貞女
の夢、つまり「清らかな理想的な崇高な芸術家との
姦通の夢」の、代償作用なのであります。
・・・
芸術家というのは自然の変種です。
角の生えた豚は、一般の豚から見れば、たしかに魅力
的かもしれませんが、何も可愛いわが豚娘に、わざわざ
角を生やしてやるには及ばない。
・・・
くれぐれも、芸術を作る側と、受けとる側とは、全然
別な世界だということを知っておいたほうがいい・・。」

panse280
posted at 18:33

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