2012年04月14日

文武両道

「太陽と鉄」(7)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
2011.1.30 第7刷発行(中公文庫)

<文武両道>
「私(三島)が太陽と鉄から、(ただ、言葉を以て
肉体をなぞるだけではなく)肉体を以て言葉をなぞる
という秘法を会得しはじめるにつれ、私の内部では
両極性は均衡を保ち、直流電流は交流電流に席を譲る
ようになった。私のメカニズムは、直流発電機から
交流発電機に成り変った。そして決して相容れぬもの、
逆方向に交互に流れるものを、自分の内に蔵して、
一見ますます広く自分を分裂させるように見せかけ
ながら、その実、たえず破壊されつつ再びよみがえる
活々とした均衡を、一瞬一瞬に作り上げる機構を考案
したのである。この対極性の自己への包摂、つねに相
拮抗する矛盾と衝突を自分のうちに用意すること、
それこそ私の「文武両道」なのであった。」

「「武」とは花と散ることであり、「文」とは不朽の
花を育てることだ、と。そして不朽の花とはすなわち
造花である。」

「「文武両道」にはあらゆる夢の救済が絶たれており、
本来決して明かし合ってはならない一双の秘密が、
お互いに相手の正体を見破っている。死の原理の最終
的な破綻と、生の原理の最終的な破綻とを、一身に
擁して自若としていなければならぬ。人はこのような
理念を生きることができるだろうか?」

panse280
posted at 19:56

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