2012年03月13日

究極の成功者とは

「不道徳教育講座」(23)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
2010.5.15 改版25版発行(角川文庫)

<究極の成功者とは>
「人間対人間では、いつも勝つのは、情熱を持たない
側の人間です。・・・情熱一本槍の人生観を持った男
に、いかに敗北者が多いことか!
・・・
情熱というものは皮肉なもので、いつも情熱の持ち主
が損をするように損をするようにと仕向けて来る。
・・・
「さァ、今夜はステキな女の子を引っかけてやるぞ」
と自信満々、街へ出てゆくとします。そんな晩には、
決して女の子は引っかかりません。なぜなら君の
ほうが「求めている」からです。
逆に、君が、懐中一文なしで、二日酔いから胃の具合
がわるく、食欲も性欲もない、恋愛なんて考えたくも
ない状態で、ただブラリと街へ散歩に出たとします。
そんなときは、えてして、すばらしい女の子が引っか
かる。理由はカンタン、君のほうに気がないからで
あります。
人生万事かくの如し、セールスマンの秘訣は決して
売りたがらぬことだと言われている。
・・・
人生では、しかし、困ったことに、勝利者が必ず幻滅を
味わうようにできている。なぜなら、人間は自分の
所有するものには価値を置かず、持たないものばかり
欲しがるから、恋愛の成功者は、それに幻滅して、
「ああ俺が女という女に振られても、大臣になって
いたらなァ」などと思う。
・・・
人生の面白さは、こうなると、絶対の勝利者こそ、
絶対の敗北者に見えて来ることです。」

panse280
posted at 20:31

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