2012年03月10日

刃物三昧について

「不道徳教育講座」(20)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
2010.5.15 改版25版発行(角川文庫)

<刃物三昧について>
「日本人は、江戸末期までは、心ゆくまで
原始本能をたのしむ高級な文明人であった。血のり
をふんだんに使ったお芝居や、不具の見世物や、・・
それらさまざまの文明の産物を、バカなお役人の頭
で、一概に野蛮の一語で片付けてしまった。
・・・
そして日本の文化はますます野性的な魅力を失う
につれて、巷(ちまた)には、凶悪犯罪が増大して
ゆくのであります。
・・・
こんなことなら、むかしのサムライのように、丸の内
へ出勤する全サラリーマンが、刃物三昧の気分を享楽
することができるように、夏のあいだだけ帯刀御免で
出勤したらいいかもしれない。
満員電車の中で、村正や正宗が、背広の腰に、ガチャ
ガチャと触れ合う。それだけで、人々はえもいわれぬ
夏らしい気分を味わうでしょう。
こう大ぜいの人間が日本刀を持ち歩いては、チンピラ
の小刀なんか、一向威力を発揮しない。刃物がちっとも
珍しくなくなり、夏の風物詩にすぎなくなる。」

panse280
posted at 18:05

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