2012年03月09日

ナメクジがこわい

「不道徳教育講座」(19)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
2010.5.15 改版25版発行(角川文庫)

<ナメクジがこわい>
「私(三島)はカニに弱い。・・・カニという
漢字を見ただけで、その形を如実に思い出して、
卒倒しそうになる・・・それでも私はカニの肉
は大好物で・・・喜んで食べる。だが、缶詰に
貼ってあるレッテルのカニの絵を見たら、もう
いけない。・・・いそいでレッテルをはがして
破いて捨てて、カンヅメの中身だけを食べるの
である。
・・・
三船敏郎氏は石燈籠にヨワイそうだし、・・・
日本の鬼も柊(ひいらぎ)の葉にヨワイのです。
絶対の強者というやつは面白くないという考え
が誰にもある。
・・・
ヒトラーという存在がどことなく陰惨なのは、
ヒトラーは怖いものがなかったらしいからだ。
ヒトラーがもしナメクジに弱かったりしたら、
ナチスはもっと繁栄をつづけることができたかも
しれません。
・・・
人の心の抱く恐怖の分量などは各人大体同じだ
から、くだらぬものを怖がっていれば、恐怖の
全分量がそれで一杯になってしまい、死や水爆
や戦争に対する恐怖を免かれる。・・・その
おかげで、現在における自分の自由を確保でき
るのです。」

panse280
posted at 21:08

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字