2012年02月22日

泥棒の効用について

「不道徳教育講座」(3)

三島由紀夫  1925-1970
yukio mishima
2010.5.15 改版25版発行(角川文庫)

<泥棒の効用について>
「古代ギリシャのスパルタでは、少年たちに
泥棒行為が奨励されていました。」

「古来、各民族の道徳には二つの型があるそう
でして、罪の道徳と恥の道徳とに二大別される。」

ギリシャも日本も「恥の道徳」で、キリスト教
は「罪の道徳」です。

「スパルタ少年と狐」という泥棒のお話があり
ます。
少年はさる農家から狐を盗んだ。そしてつか
まった。少年は狐を服の下かくした。
「おまえ、狐を盗んだろう」
「イヤ、盗まない」
と否定しているうちに、狐は少年の腹に食いつ
いた。少年は痛みをこらえた。「イヤ、盗まない」
狐はとうとう少年の腹を食い破ってしまった。
少年は死んだ。

「ここまで来ると泥棒も天晴れだというわけで、
少年はその克己心によって英雄視されたわけで
ある。」

「善人たることもむつかしいが、泥棒たること
もむつかしい。スパルタ少年や、石川五右衛門
のような泥棒になるには、三等国日本の総理大臣
なんかになるより、ずっと捨身の覚悟と恵まれた
天才を要します。」

panse280
posted at 19:15

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