2011年10月19日

ツァラトゥストラかく語りき(2)

「この人を見よ」(12)
--発狂前年の最後の著作--
ニーチェ 1844-1900
Friedrich Wilhelm Nietzsche
西尾幹二訳
1998.8.20 第10刷発行(新潮文庫)

<「ツァラトゥストラかく語りき」>(2)
「ツァラトゥストラ、あらゆる精神の中で最も
然りと肯定するこの精神は、一語を語るごとに
矛盾している。彼の中ではあらゆる対立が一つ
の新しい統一へ向けて結び合わされている。
人間の本性の最高の諸力と最低の諸力、最も
甘美で、最も軽佻で、しかも最も恐怖すべき
ものが、一つの泉から不滅の確実さをもって
迸(ほとばし)り出ている。その時に至るまで、
高さとは何であり、低さとは何であるかを、人は
ついに知らない。ましてや真理とは何であるかは
なおさら知らない。真理がこのように啓示される
どの瞬間も、ついぞ誰かに先取りされたことは
なかったし、誰かしら偉大な人によって推察され
たこともない。
ツァラトゥストラ以前には叡智はなく、魂の探求
はなく、説話の術もない。この書にあっては、
最も卑近なもの、最も日常的なものが、未曾有
の事柄を語っている。」

panse280
posted at 18:43

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