2011年10月12日

ヴァーグナー

「この人を見よ」(5)
--発狂前年の最後の著作--
ニーチェ 1844-1900
Friedrich Wilhelm Nietzsche
西尾幹二訳
1998.8.20 第10刷発行(新潮文庫)

<ボードレール>
「ヴァーグナーに一番最初び帰依した知性ある
人は誰であったか?それはシャルル・ボードレール
であった。彼は最初にドラクロアを理解した人物
で、典型的なデカダンである。
・・・
(ヴァーグナーに熱中していた)私(ニーチェ)が
ヴァーグナーを断じて許さなくなったが、その
わけは何か?彼がドイツ人たちに迎合したからである。
彼が帝国ドイツ的になったからである。ドイツの息
がかかると、文化は駄目になる。」

注)デカダン:虚無的・頽廃的な態度で生活する人。

<ヴァーグナー>
「あれこれ考え合わせてみると、私(ニーチェ)は
ヴァーグナーの音楽がなかったら、私の青年期を
持ちこたえることが出来なかったと思う。私は
ドイツ人の一人であることを宿命づけられていた
からである。どうにも耐え難い圧迫から逃れようと
するときには、人は麻薬を必要とする。まさにそう
なのだ。私はヴァーグナーを麻薬として必要とした。
ヴァーグナーはいっさいのドイツ的なものに対する
すぐれて効き目のある対抗毒なのである。
・・・
「トリスタン」より以前のヴァーグナーの作品を、
私は見下していた。・・・私は今日でも「トリスタン」
と同じくらい危険な魅力を持ち、同じくらい戦慄的
で甘美な無限性を備えた作品を探しているのだが、
依然として見つからない。芸術の全領域を探しても
見つからないと思っている。レオナルド・ダ・ヴィンチ
の示すあらゆる異様な魅力も、「トリスタン」の最初
の一音で魔力を失ってしまうであろう。この作品こそ
断じてヴァーグナーの最高の絶品である。
(後の「ニーベルングの指輪」等々は後退である)」

panse280
posted at 19:59

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