2011年09月16日

最も自由な著述家

「人間的、あまりに人間的(供法(3)
--自由精神のための書--
ニーチェ 1844-1900
Friedrich Wilhelm Nietzsche
中島義生訳
「ニーチェ全集6」
2011.8.10 第8刷発行(筑摩書房)

<113-最も自由な著述家>
「ゲーテがその世紀の最も自由な精神と尊敬した
ローレンス・スターンの名を、どうして自由精神
のためのこの書物のなかで挙げずにすませてよい
だろうか!・・・あらゆる時代を通じて最も自由
な著述家・・・これに比較すれば、他のあらゆる
著作家たちは、こわばり、角張って、狭量で百姓
流のがらがら者に見える。彼の賞讃さるべき点は、

完結した冴えた旋律ではなくて、いわば「無限
旋律」であろう、・・・スターンはこういった
曖昧性の巨匠である、・・・彼が話を脱線させる
とき、それは同時にその物語の続きであり、展開
である。彼の格言は、同時に、あらゆる格言的な
ものに対するアイロニーを含むし、まじめなもの
に対する彼の嫌悪は、どんなことでも単に浅く
且つ皮相的に受け取るわけにはゆかないという

彼の性向と結びついている。
したがって、彼のまっとうな読者は、いったい
歩いているのか、立っているのか、それとも
寝ているのかはっきりしない感じ、いわば浮遊感
にいちばん近い感じを抱かせられるわけである。
・・・スターンは、いきなり役柄をとりかえる、
そして、作者であると同時に、またたちまち読者
にもなる。・・・良きフランス人、また彼ら以前

には若干のギリシャ人たちが散文家として望み、
また果たし得たものは、スターンが望み、また
果たし得たものとちょうど正反対のものである。
つまり、まさに巨匠的例外をもって自任する
スターンは、あらゆる作家的芸術家が自己に
求めるもの、たとえば訓練、完結性、性格、作意
の一貫性、単純さ、足どりや風貌の均整さなどを

蔑視する。・・・(彼は)およそ崇高と下賤の
あいだに存在するものなら何にでも通暁していた。
・・・こうした肉的にして霊的な曖昧さ、身体
のどの繊維や筋肉のなかにまでもしみわたった
これほどの自由精神ぶり、彼が持っていたこれら
の性質をおそらく彼以外の誰も持ったことはない
だろう。」

注)ローレンス・スターン:
「トリストラム・シャンディー」は現在、
岩波文庫(上・中・下)版を入手できる。
彼を日本に初めて紹介したのは夏目漱石である。
「吾輩は猫である」には「トリストラム、シャンデー」
の影響がみられる。

panse280
posted at 19:19

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