2011年07月21日

漱石生誕百年記念講演

「決定版 夏目漱石」(27)

江藤淳 1932-1999
jun etou

2006.9.20 第12刷発行(新潮文庫)
(この本の内容は1955-1974に書かれたもの)

<漱石生誕百年記念講演>
「近代というものはなにもプラスばかりではない。
物質的にはプラスかもしれないけれど、精神の問題、
魂の問題では、多くの非常に危険なマイナスを含んで
いる。しかし、われわれはそれを上手に避けること
などできはしない。そのマイナスをすべて引き受ける
以外にない。そして引き受けた上で生きていかなけれ
ばならない。それがほんとうに現代に生きているわれ
われの問題なんだぞということを、漱石はその全集の
中で、その存在によってわれわれに今日なお語り続け
ている。漱石がなぜこんなに読まれるか。・・・
それは結局、漱石以外のどの作家もこの焦眉の問題を
われわれと一緒に生きようとしてはくれないからです。
・・・だから私たちは漱石を読むのです。・・・
これから時代がさらに進んで、われわれ現代の日本人
がもっと孤独になり、さらに多くの悲惨を体験する
ようになればなるほど、漱石はいよいよ広く、深く
読まれるだろうと私は信じて疑いません。」

panse280
posted at 22:41

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